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加齢性黄斑変性症
加齢黄斑変性症とは、加齢や生活習慣の影響によって、網膜の中心部にある黄斑部が障害され、視力低下やゆがみを自覚し、最終的には失明に至ることもある病気です。50歳頃から発症し、男性や喫煙者に多いことが知られています。50歳以上の約1.2%(約80人に1人)に発症するとされています。(※1)
日本では中途失明原因の第4位に位置する病気ですが、欧米では失明原因の第1位となっており、日本でも食生活の欧米化や高齢化などに伴い、患者数は増加傾向にあります。(※2)
(※1)出典:眼科疾患分野|加齢黄斑変性(平成23年度)
(※2)出典:日本眼科学会 加齢黄斑変性
加齢黄斑変性症の原因(危険因子)
加齢黄斑変性症の発症の危険因子としては、加齢や喫煙以外にも、太陽光、脂質異常症、抗酸化物質の摂取不足などの関与があるとされています。
加齢黄斑変性症の2つの病型と症状
加齢黄斑変性症には、大きく分けて2つの病型があり、症状や進行の早さ、治療法も異なります。
- 浸出型
日本人に多い型です。黄斑部に異常な血管(脈絡膜新生血管:もろくて出血や水分の漏れが生じやすい)が発生します。新生血管からの出血や水分の漏出が生じると、黄斑部の正常な構造が乱れ、障害されることで、中心部のゆがみや視力低下などの症状が起こってきます。治療せずに放置すると、大出血による急激な視力低下や黄斑部変性の不可逆的な進行によって失明に至る可能性が高くなります。 - 萎縮型
黄斑部に新生血管は生じないままに、黄斑部の細胞(色素上皮細胞)がゆっくりと変性進行し、中心部の視力が低下していく型です。浸出型と比べると症状の進行はかなりゆっくりですが、途中で新生血管が生じて浸出型に移行する場合があります。有効な治療法はなく、現在のところは経過観察のみでの対応となります。
加齢黄斑変性症の検査
診断と今後の治療方針を決めるためには、視力検査や眼底検査に加えて、以下の2つの検査が大変重要です。
- 光干渉断層計(OCT)
黄斑部の形態を断面で見ることができる眼底画像診断装置で、現在の病状把握、治療による作用の確認などに役立つ情報が得られます。注射や麻酔を必要とせずに撮影できるため、加齢黄斑変性症の診療には欠かせない検査です。 - 蛍光眼底造影検査
造影剤を腕から注射し、眼底の血管の状態を詳しく観察することができます。新生血管の位置を確認し、治療方針の決定に役立てます。
ただし、造影剤を使用することによって、吐き気や嘔吐、ショック症状などの副作用が生じることもあるため、アレルギー体質の方は検査を行えないことがあります。
浸出型加齢黄斑変性症の治療
発生した新生血管に対する治療として、3つの治療法があります。
- レーザー光凝固
新生血管が中心から外れている場合に限り、適応となります。ただ、新生血管の成長を阻止することができる反面、レーザーが照射されたところの網膜も一緒に障害されてしまいます。 - 薬物治療
「抗VEGF薬の硝子体内注射」
新生血管が中心にある場合にの第一選択となる行う治療です。新生血管の成長を阻止し、新生血管からの出血や水分漏出を減らすことが期待できます。レーザー治療と異なり、網膜に対する直接の障害はなく、視力の改善も期待できます。ただし、新生血管を閉塞しきることは困難で、治療の作用は長くは続かないので、くり返しての投与が必要となります。
また、眼球内に注射することから、眼内炎、網膜剥離、眼内出血、白内障など、眼球に生じる合併症を引き起こすこともあります。また、高齢者の場合は脳卒中を発症するといった副作用の報告もあるので、投与には十分な注意が必要となります。 - 光線力学的療法
注射で光に反応する薬を腕の静脈に投与した後、弱いレーザーを照射して、新生血管を閉塞させます。
※当院では実施しておりませんが、適応のある方は専門病院へご紹介いたします。
加齢黄斑変性症の予防と対策
- 加齢黄斑変性症と診断されたら
昔は、よい治療法がなく、失明にいたる至るケースが多かった加齢黄斑変性症ですが、現在は、抗VEGF薬の登場によって、定期的な検査と治療を継続することで、症状の進行や視力の低下を防げる可能性があります。継続的な治療が必要となるため、経済的負担などの問題もありますが、よりよい視力を維持するためには、定期的な経過観察が大切です。 - 加齢黄斑変性症の発症や進行予防に有用とされている栄養素として
亜鉛(牡蠣、牛肉、豚レバー)、ビタミンC(緑黄色野菜、緑茶)、ビタミンE(アーモンド、油脂類)、ベータカロテン(緑黄色野菜)、ω-3多価不飽和脂肪酸(魚類)、などがあります。片目だけ発症している方にとっては、もう片目の発症を避けるひとつの方法として、こうした栄養素を摂ることが推奨されています。サプリメントも発売されていますので、お気軽にご相談ください。